ダイソンが提携している登録慈善団体・ジェームズ ダイソン財団は、財団が主催した国際エンジニアリングアワード「ジェームズ ダイソン アワード 2015」 (James Dyson Award、以下JDA) の表彰式を行いました。
JDA は日常の問題を解決するアイデアを募集するもので、経済産業省が実施する第6回「キャリア教育アワード」中小企業の部において経済大臣賞を受賞しました。今年は20カ国から過去最多となる710作品のエントリーがあり、日本からは「YaCHAIKA」と「学習機能搭載・排泄検知シート」の2作品が国際TOP20に選出されました。
11月13日に都内にて、国内受賞作品表彰式が行われました。日本の第一次(国内)審査は、デザインエンジニアの田川欣哉氏とフリージャーナリスト・コンサルタントの林信行氏が務め、国内の最優秀賞から5位まで表彰されました。
■5作品中2作品が災害時に役立つ作品
1位は災害時に非常灯になるつり革。圧電素子を用いた振動電池を内蔵し、電車の揺れに対応した発電と備蓄を実現。災害時には鉄道会社がロックを解除し、乗客は引っ張るだけで簡単に取り外しができます。非常灯として速やかな行動を助けるとのこと。大地震が起こる可能性が高いと言われているので、地下鉄で採用されたら心強いですね!
▲ふだんはつり革として使えます。電車の揺れで発電と備蓄をするそうです
▲いざというときは、鉄道会社の判断でロックが解除され、このようにはずして使うことができます
▲受賞された本田 光太朗さん、河内 貴史さん (ともに名古屋市立大学大学院 芸術工学研究科 在学)
2位はかかとがバネになっているハイヒール「YoCHAIKA」。この形は好みが分かれそうですが、私は好きです。ハイヒールは本当にはくのが大変で、疲れます。YoCHAIKAは、ウォーキングシューズよりもラクで疲れないんだとか。来年9月の発売を目指しているそうです。しかし「見た目が奇抜すぎる」という意見はわかるのですが、「女性にハイヒールを強いるのか」といった声もあったそうで、驚きました。なんでそういう発想になるのでしょうか・・・・・・。履きたい人が履けばいいと思います。個人的には応援しています!
▲前から見るとふつうのハイヒールに見えます
▲後ろから見るとバネが!
▲受賞された山田 泰之さん( 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 卒業)
3位は水道管に残っている水を手動でくみ上げる「BICHIKU」。災害時に家の止水弁を止めて水道管に残っている水を手動ポンプで引き抜くというアイデアで、蛇口とポンプが組み合わさっています。本当に水をくみ出せるかという検証が行われていないところが残念との評でした。でも、これが実現されると面倒な水の買い置きが減るかもしれません。
▲一見、ただの蛇口です
▲大地震などが起きたとき、止水弁を止めて家の水道管に残っている水をくみ出して使うというアイデア!
▲受賞された瀧口 真一さん (九州大学 芸術工学府 卒業)
4位は学習機能搭載・排泄検知シートです。排泄物のにおいで排泄物の検知するだけでなく、他のにおいと見分けができる学習機能も付いているそうです。人工知能で排泄パターンを把握し、いつ頃排泄するのか、確実な予測をすることもできるとか。要介護者のオムツ交換の空振りは月50時間にものぼるそうで、これがきちんと商品化できれば介護する方の負担がグッと楽になる素晴らしいアイデアです。
▲学習機能搭載・排泄検知シート。介護する方の負担が大幅に減るとのことです
▲宇井 吉美さん、谷本 和城さん、天野 雅貴さん、秋庭 裕さん(全員 千葉工業大学 工学部 卒業)
■イノベーターは発明だけで満足してはいけない
▲デザインエンジニアの田川欣哉氏
田川氏は、「去年まではハンディキャップを改善する作品が多かったのですが、今回は5製品のうち2製品が災害時のシビアなシチュエーションをデザインで緩和できるか、挑戦した作品でした。つり革やBICHIKUは、どこまで自治体に持って行けるのか。イノベーターの仕事は、ただ発明するだけでなく、製品化にこぎつけることが大事だと思います」と語りました。
▲フリージャーナリスト・コンサルタントの林信行氏
林氏は、「日本からは35件のエントリーがあり、前回よりも増えてバリエーションも今年はカラフルになりましたが、課題の設定がいまひとつで、何を解決するのか、よくわからない作品が多かったように思います。課題を発見する能力も大事。今回選ばれた作品はどれも素晴らしいものばかりでしたが、差は昨年よりも開いているように思います」と少々厳しめのコメントでした。
■国際最優秀賞は、基板のプロトタイプが作れる3Dプリンタ
「国際最優秀賞」はプリント基板(PCB)を3Dプリントする機器「Valtera V-One」(ヴォルテラ ヴィーワン)。カナダのウォータールー大学で電子機械工学を専攻する4人の学生で、1時間から2時間でプリント基板のプロトタイプを作成できるそうです。基本的に基板は外注するしかなく、時間がかかっていましたが、この3Dプリンタがあれば大幅な時間短縮ができるそうです。製品化すれば、特に学生や小規模の事業者にとってさまざまな電子機器のプロトタイプが早く作れるようになりそうですね。
▲こちらの動画がわかりやすかったのでご覧ください