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新製品は年間1000アイテム以上! 躍進するアイリスオーヤマの強みとは?

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 アイリスオーヤマ(仙台市)の角田I.T.P./角田工場で4月20日、メディアツアーが行われた。今回はその様子をレポートする。
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仙台駅から車で1時間ほどの場所にある角田I.T.P./角田工場
■2009年に参入した家電の売上は40%を占める
 
 最初にヒットしたのは、中身がわかるプラスチック製のクリア収納だという。探しやすいと大評判で、大変売れた。その後も園芸グッズやペット商品など、次々ヒット商品を生み出している。
 2013年には、東北の震災復興を応援する意味も兼ねて、食品事業にも参入。手軽に食べられる、鮮度が落ちない密閉された美味しいお米なども販売している。アイリスオーヤマは、ここ数年で新しいビジネスに次々挑戦しているような印象がある。
 売上高は、現在およそ1100億円。その40%は家電の売上となっている。家電事業に本格参入したのは2009年であり、まだ6年ほどしか経っていないが、売れている商品はいくつもある。
 LED照明やLED電球をはじめ、工事不要ですぐに使用できる2口IHクッキングヒーター、トースターの置き換えで狭いキッチンに置けるノンフライ熱風オーブン、手軽に持ち運べるマット不要のふとん乾燥機など。アイリスオーヤマの製品を持っているという方も多いのではないだろうか。
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↑広いショールームには多数商品が並んでいる。ここにバイヤー等が訪れるという
■ひらめきから商品化までの期間はたった半年
 常務取締役研究開発本部 大山繁夫氏は、社長の大山健太郎氏の実弟で、開発だけでなく品質管理なども全て掌握しているという。
 
 「日常製品の不満からソリューションを生み出している。1製品を徹底的に使い、『ここを改善したい』という不満点を洗い出してから商品作りをしている。少子高齢化の時代なので、操作がしやすい家電を目指している」と、マーケティングに頼らない商品作りを強調する。
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↑常務取締役研究開発本部 大山繁夫氏
 そして、年間1000アイラム以上の新製品を発売するには、スピードが何より重要だという。
「家電には旬がある。思いついてから商品を販売するまで、2年かかったのでは遅い。企画から販売まで通常1年以上かかるものも、半年で出せるようにしている。そのためには、リレー式で開発を行っていては間に合わない。開発ミーティングはプロジェクト単位で行われ、例えば企画担当、品質管理担当、金型担当が情報共有して同時に走る。毎週月曜日の"新商品開発会議"では、社長をはじめとした役員が参加し、プロジェクトのに関わる全ての担当者が出席し、そこで決済が行われる」
 また、大阪にR&Dセンターを設立したことも、家電開発に大きな意味があるという。大手家電メーカーが集まる大阪では、優秀な人材が集まっている。そこで、家電メーカーを退職した人材を積極的に採用することで、さまざまなノウハウが集まり、以前に比べて品質が大幅に向上しているそうだ。
 最後に「今までは流行に乗った、2番手の商品が多かった。これからは、文化を変えるような商品をゼロから作っていきたい」と語った。
■緊迫感ある「新商品開発会議」に潜入
 実際に行われる"新商品開発会議"も見ることができた。毎回白熱するそうで、この日も会議が押してしまい、30分以上待たされた。ドアが開いていたのでチラッとのぞいたが、緊迫している様子が伝わってきた。
 プロジェクト単位で会議は行われ、製品ごとに社員が入れ替わるが、社長など決裁権のある役員は一日中会議に参加する。
 ちょうどLED照明の議題が上がっているときに、入ることができた。それぞれの担当者が報告をすると、経営陣から鋭い指摘や質問が入る。
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↑すごい緊張感。細かい指摘が役員から入っている
 それぞれの担当者が、大勢の中で上層部と直接やりとりをするめずらしい会議だ。一度に集まることで、企画の内容や、上層部の指示等を共有することができる。
■パソコン使用は1回45分まで! 会議は立ち話
 次に事務所内部を見せてもらった。席は自席とパソコンがあるデスクが分かれている。基本的に自席ではパソコンを使用しないことになっている。
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↑こちらが自席
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↑こちらがパソコン島
 "パソコン島"にいられるのは1回45分まで。だらだらとパソコンに向かっていても生産性は上がらないので、45分経過したら自席に戻り、15分間で「どのように処理するか、整理するか」をまとめてから、またパソコンに向かうという。
 事務所の中を見ると、自席はガランとしており、パソコンで向かう人がほとんどだった。ディスプレイにはWEBカメラがついている。いつでもWEB会議、打ち合わせができるようになっている。
 会議は丸テーブルで立ち話となる。座っていると時間が長くなり、なかなか話が進まないから。さきほど話していただいた大山氏の部屋にも丸テーブルがある。このスタイルにすると、ミーティングなども社員、管理職、役員が混じり、分け隔てなく話しができるメリットもあるという。
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↑常務の部屋にも丸テーブル
■工場の横には全自動の倉庫も
 工場の内部も見せていただいた。家電製品は主に中国で作られているそうだが、角田の工場では主にプラスチック製品を製造している。
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↑行ったときは樹脂でプランターが作られていた
 工場の隣には、巨大な倉庫も併設されている。自動倉庫は高さ30m、幅24m、奥行90mという大きさで、24時間、11台のロボットが稼働している。
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↑広くてビックリ。全自動で人はいない
 このように工場の隣に自社倉庫を備えているのはめずらしいとのこと。問屋を間に介さないので、スーピーディーに出荷できるメリットがある。なお、自動倉庫はコンピューターで管理しており、東日本大震災時にはこの荷物が崩れてエラーが出て止まってしまったそうだ。荷物を戻すため外部に委託しようとしたが、2-3ヶ月以上かかると言われたことから、社員が命綱をつけて作業し、3日で復旧させたという。震災後も「スピード」を重視し、早く製品を届けることも復興支援と考え、全社で話合った結果、できることをやったとのことだ。
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↑こちらは有人倉庫
 評価試験センター、応用研究部も見学することができた。工場にはほとんど人を見かけなかったが、ここには多くの社員の方が、さまざまな機械を使いながら自分の目でチェックしている様子がわかる。
 公的な試験センターに依頼をする前に自社でチェックし、スピード化を図っているという。
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↑マイクロスコープによるチェック
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↑フライパンの摩耗テストもこんな風に行われるらしい
■トップダウンがうまく機能しているオーナー企業
 カリスマ社長の大山社長とその弟の大山常務が全社のプロジェクトをくまなく把握している。同族経営の会社となるが、毎週月曜日に行われる会議を見る限りは、一般社員と役員との距離は近く、一致団結して商品作りを行っているように感じた。
 決裁権が社長にあるのは、もし商品が売れなかったとしても、その部門や個人のせいではなく、全社の責任にするという狙いがある。失敗を恐れず、自由に尖った商品作りに挑戦してほしいという願いからだという。
 同族経営の結果、ゴタゴタして醜態を晒した大塚家具のような例もあるが、アイリスオーヤマはトップダウンがうまくいっている印象を受けた。年間1000アイテム以上の新商品を発売するには、会社に結束力があり、風通しの良い組織でなければ到底無理だろう。今回、アイリスオーヤマの内部を見学させていただいたことで、躍進する企業の秘密を垣間見ることができた。

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Posted by 石井和美