三菱の炊飯器「本炭釜」が登場して10年目。高級炊飯器の先駆けとなったブランドで、他社も追随して高級モデルを販売しました。
今年は10年という節目もあって、新しい炊飯器「KAMADO」(NJ-AW106)はスクエア型からラウンド型になり、デザインが大きく変わりました。99.9%炭素材の内釜「本炭釜」もついに"羽釜"へ。
見た目があまりにも変わってしまい、最初見たときは驚きました。理由がどうしても聞きたくて、秩父にある三菱の工場に行ってお話を伺ってきました。
■スタイリッシュなスクエア型から、ぽってりデザインに変わった理由
三菱のフラグシップモデルの炊飯器といえば、スタイリッシュなスクエア型デザインです。新しい「KAMADO」は、下ぶくれのぽってりデザイン。なぜ、コンパクトでスタイリッシュなスクエア型をやめて、このカタチにしたのか、率直に聞いてみました。
「断熱を強化するためです。火力を強くすれば強くするほど、加熱ムラが起きます。大火力にしても均一に加熱できるよう、内釜を包み込むようにグルッと10mmの断熱材を入れました。今までのスクエア型だと、加熱ムラが起きやすかったんですよ」と、図を書いてくださいました。
▲上から見た断面図。ホワイトボードに書いてくださったので再現しました(私の図はヘタですみません...)。四角い形だと青い丸の部分が薄くなるので、どうしてもムラが起きちゃうんですね。KAMADOは内釜を丸く包み込むため、加熱ムラが起きないそうです
断熱材だけでなく、空気の層も作ってあるので厚みがあるそうです。ごはんを炊いても、熱をしっかり閉じ込めるため、外側は熱くならないんだとか。下ぶくれデザインは、こんな理由があったのですね。
■控え目な内釜の羽は、IHと相性のいいカタチ
羽釜もずんぐりむっくりというか、想像するような羽釜ではないような......。象印や東芝のほうが、形は本物の羽釜に近い気がします。なぜ羽がこんな高い位置に?
「羽をつけることで、羽の下の部分は熱を閉じ込め、羽より上は温度が低くなります。上の温度が低いので、連続沸騰しても吹きこぼれしにくくなりました。羽を上の方につけたのは、炊きあがったごはんを羽より下にするためです。高温の部分で炊いたごはんは熱が均一に行き渡って美味しく炊けます。これはかまど炊きと同じ原理です」
三菱は圧力をかけていません。かまど炊きを調査したところ、1.0気圧だったからだそうです。圧力をかけると粘り気が増えるのですが、しゃっきりとしたかたさと水分のバランスをキープするようにしたとのこと。
「電気でご飯を炊くのは制約があります。その中で最適化して、かまどで炊いたごはんに近づけるように工夫しています」
かまどの原理を単に真似するだけでなく、火力の制約がある中で、美味しいごはんを炊けるように色々研究しているんですね。
本物のかまどの羽釜とはちょっとイメージとは違いますが、IHで使うには最適な形になっているんだなと思いました。 熱伝導率の高い「本炭釜」を採用している理由も、IHとの相性がよいからとのことです。
含水率とかたさに関しては、かまど炊きごはんの数値とほぼ同じゾーンに入ったそうです。だから「かまどごはん」と言い切れるんですね。
■しゃっきりとした粒感がすごい!
というわけで、お借りしてみました。おお、美味しいー! 三菱の特徴であるしゃっきりごはんが進化して、みずみずしさも加わった感じです。前モデルまでは、ツヤがいまちいだと思っていましたが、ピカッと輝くようになりましたね。
▲高さはありますが、思ったよりコンパクトでした
▲炊飯途中にさわってみましたが、全然熱くありません。すごい断熱!
▲見て下さい、このシャッキリした米粒! 圧力系と比べると、ごはんがスリムでシュッとしていますね。べたつきがなく、すっきりした味わいをお好みの方におすすめです!
三菱といえば「お手入れが面倒くさい」という印象でしたが、内釜のほかは内フタを取って洗うだけなので、ずいぶん簡単になっていました。