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世界初!停電も関係ナシ、完全独立型「EVシェアリングステーション」実証実験開始

2022年4月9日

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最近よく耳にする「カーボンニュートラル」。(カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる」という目標。2020年10月に政府が宣言)。

その一貫として、官民一体となって取り組む世界初の実証実験が発表されました。中国電力株式会社、広島県、パナソニック株式会社、AZAPA株式会社が役割分担を行い、「完全自立型EVシェアリングステーション」実証実験を2022年4月4日にスタートしました。期間は約5年間。

電気系統から完全に分離、独立したソーラーカーポート

この事業のすごいところは「電気系統から完全に分離、独立したソーラーカーポートと蓄電・制御システムを組み合わせる」こと。つまり、太陽光だけで電気をまかなって蓄電池にためておき、車に充電したうえで、さらにカーシェアリングのサービスまで始めるとのことなのです。電気系統に一切つながないので、停電があっても関係ありません。

ソーラー付きのカーポートも、蓄電池も、EV(電気自動車)も、カーシェアリングも、それぞれ見れば今は至る所で使われていますし、見かけますよね。でも、すべて盛り込んだサービスはこれまでなかったのです。

ハードを用意するだけではありません。モビリティパスポートを活用し、低コストで効率的な運用ができる最適台数を提案。EV導入のサポートまで行うとのことです。4台から3台に減らすなど、車両を減らすことでコストを削減し、削減したコストでEVに変更する、といった運用もできるそうです。

また、これは法人向けサービスですが、複数法人でシェアしていくことも可能だそうです。駐車場が少なくなってきた地域では、EVシェアリングを導入することで車両の効率的利用と費用負担の分散ができる、といったメリットがあるのではないか、とのことでした。

蓄電池スペースが必要となる設備構成

実証実験は「広島県立広島産業会館」本館前駐車場で実施。日照条件がよく、適した場所だとのことです。実証期間は本日から5年間程度。その間に実際に運用し、検証を行います。

手前にあった歩道橋から撮影してみました。カーポートの天面はすべて太陽光パネル(11.88kW)です。カーポートなどの構造物、太陽光パネルはパナソニックが担当しています。歩道橋から撮影したところ、天面にはびっしりと太陽光パネルが敷き詰められていました。

上から見ると太陽光パネルがよくわかります

カーポートの大きさは4台分ですが、蓄電池などを置くスペースが必要となるため、実際に使えるのは3台分。停車している車は2台で、日産のリーフとマツダのMX-30EVです。晴れた日はEVを優先的に充電し、余剰分を蓄電池に充電。夜間は昼間に充電した電力をEVへ向けて放電するとのことでした。

こんな感じで充電します

蓄電池は大きいものが一つあるわけではなく、小さめの蓄電池が引き出し式に複数入っています。定置用蓄電池10kWh×3基、可搬型蓄電池8kWh×1基。非常用コンセントは8口(kW)あります。将来的にはこの蓄電池を使って、EV(電動自動車)だけでなく、電動キックボードや電動自転車にも使われることを想定しているようです。

将来的には電動自転車などにも活用できるかも?

当たり前のことですが、蓄電池スペースが必要となりますね。日当たりのよく、ある程度土地を確保できる法人向けというのは納得でした。

3社+広島県の役割分担は?

役割分担は、中国電力が実証事業の企画や運用、完全自立型EVシェアリングステーションの構築、EVシェアリングサービス「eeV」の提供を行います。広島県は実施場所の提供、EV社絵リングの法人利用など。パナソニックはソーラーカーポートの開発・提供、実証実験への協力。AZUPAは可搬型(持ち運べる)蓄電池システムの開発と提供などを行うそうです。

記者発表会には中国電力社長 清水希茂氏と広島県知事 湯崎英彦氏が出席し、コメントしました。

中国電力社長 清水希茂氏(左)と広島県知事 湯崎英彦氏(右)

「EVステーションとカーシェアリングを組み合わせたこれまでにない挑戦的な取り組み。共同でできることを心よりうれしく思っています。離島なども含めて、災害時には電源確保にもつながります。地域のみなさんと連携をはかりながらネットゼロカーボン社会を実現していきたいと考えています」(広島県知事 湯崎英彦氏)

「今回の取り組みは世界初となります。日本政府によるカーボンニュートラル宣言を受け、自治体や企業体はカーボンニュートラルへの取り組みが加速しており、脱炭素社会の実現や技術開発を進めています。共通の目標達成に向けて当社から広島県様に構想を提案したところ、快諾していただけました。官民一体になってともに歩めることを心強く感じています。地域のEVソリューションを新たなラインナップのひとつに加え、地域のカーボンニュートラル実現に向けて少しでも貢献できるように務めていきたいと考えています」(中国電力社長 清水希茂氏)

式典では中国電力社長 清水希茂氏 広島県知事 湯崎英彦氏によるテープカットが行われました

主な提供エリアは岡山県、広島県、山口県(見島をのぞく)、兵庫県、香川県、愛媛県の一部。料金についての詳細は以下のリンク先に掲載されています。契約期間は15年(保証期間も15年)、法人向けのサービスとなります。ユーザーは初期投資ゼロで、月々サービス料を支払うそうです。

▶詳細はこちら ソーラーカーポートPPZ 

考えられる課題

・ガソリンなら給油すればすぐに使えるが、EVの場合は給電中は車を使うことはできない。車を使いたいときに使えない、ということがでてきた場合は?

・長雨などで曇り空が続いた場合、蓄電はどうなる?

・コストと利便性のバランスについて、ユーザーが満足できるサービスなのか。

・15年間保証を謳っているが、システムの制御と運用はうまくいくのか。

こういった点が気になるところですが、実際に運用していく中で新たに課題が出てくるかもしれませんし、解決されるのかもしれません。5年後、実証実験の結果が楽しみです。