パナソニック宇都宮工場に潜入!『再生品』の現場を体感してきた
パナソニックが再生品を販売していることを、知っていますか? パナソニック宇都宮工場のリファービッシュ工程がリニューアルされ、メディアに公開されました。サーキュラーエコノミーの実現に向けた現場の取り組みや、地域とのつながりを体感できる一日となりました。

リファービッシュ(再生)で環境問題に取り組む
パナソニックが目指すのは、地球環境への負荷を最小限に抑えつつ、限りある資源を最大限に活かすものづくりで、その実現を支えるのが長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」。2020年に制定されたこの環境戦略は、2030年までに自社事業に伴うCO2排出量を実質ゼロに、2050年までに全世界のCO2排出総量の約1%に当たる年3億トン以上の削減貢献インパクトを創出することを目標としており、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを両輪として、環境問題の解決を目指しているそうです。
リファービッシュ事業もその一環です。再生された製品には独自の品質基準が設けられ、最大1年間の保証をつけるなど、信頼性と安全性にも注力しているとのこと。例えば、2024年2月にはやや使用感のある「B」「C」ランクの商品の再生もスタートし、現在では13カテゴリーにまで拡大。再生品の利用者満足度は94%に達したそうです。
「使い続ける」ことの価値を高めるアフターサービス
「長く使ってもらうために、使い続けられる仕組みを整える」という想いから、全国に広がる100の拠点では、年間約160万件の修理・メンテナンスに対応。エアコンのクリーニングに続き、2024年9月から開始されたドラム式洗濯機のヒートポンプユニットのクリーニングサービスも全国展開される予定とのことです。
さらに、IoTやアプリとの連携により、ユーザーに対して最適なメンテナンス時期の通知や延長保証サービスも提供。製品の寿命を延ばすだけでなく、ユーザーの安心感や満足度にもつながるサポートも行っているそうです。

量産体制から多品種再生にシフト
再生対象は、洗濯機やテレビ、カメラなど多岐にわたり、再生工程は、外観検査からクリーニング、部品交換、動作検査などが効率的に行われていました。10年前の宇都宮工場は量産体制でしたが、現在は再生工程にシフトし、効率的な多品種再生を実現。再生工程は量産工場と比較してコンパクトで少人数体制とし、多くのカテゴリーを効率よく再生しているとのことでした。
工場見学は、木の香りから始まりました。工場の入り口や工程に地元産の杉を使い、従来のものづくり工場とは異なる清潔感や温かみを演出。地元木材(栃木県の杉)を活用しているそうです。
こちらは洗濯機の部品。洗濯機1台を分解し、多くの部品が再利用可能であることを示しています。「もったいない」の精神から再生事業をスタートしたとのこと。従来は洗濯機1台を丸ごとシュレッダーで粉砕していましたが、今後は使える部品のみを交換・クリーニングして再利用し、新製品同様の品質でお客様に届けることを目指しているそうです。
再生品のデータを設計部門にフィードバックし、次世代製品の改善に活か取り組みも行っているとのことでした。






従業員教育に使われる施設も公開されました。


利益はこれから? 再生ビジネスの難しさと可能性
リファービッシュの意義や取り組みのすばらしさを体感できましたが、この事業も現時点で課題がいくつかありそうです。ひとつは、認知度です。同社は「オンラインサイトでの販売認知度が約10%と低く、今後の認知拡大が必要です。認知拡大は今後の重要な課題となっています」。
関連して、重要な課題となるのが収益性です。実際の工場見学を通して感じたのは、再生作業が非常に丁寧である一方で、時間と手間を要するため、大量生産には向かず、スケールメリットを出すのが難しいという点でした。
この点について同社は、「収益性については現在スキーム構築中であり、再生コストや物流、拠点戦略などを含めて今後検討を進めていく段階です。将来的な拡大に向けて、コスト構造や物流体制の最適化も検討課題となっています」と説明しています。
現時点では、同工場が「環境に配慮する企業姿勢」を象徴的に示すPR拠点としての役割を果たしている印象を受けました。ひとつひとつ丁寧に再生される工程を見学することで、再生品への信頼感が高まるとともに、品質へのこだわりが伝わってきました。
今後、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの取り組みをビジネスとしてどのように成立させていくのかは、注目されるポイントとなりそうです。持続可能な社会に向けたこれらの挑戦が、今後も継続されることを期待したいところです。
6月17日からは一般見学も受付開始されるそうなので、ぜひ機会があれば工場見学に参加してみてください!