右肩上がりで売れ続けているパナソニックの焦電型赤外線センサ「PaPIRs(パピルス)」が今後も必要とされるワケ
パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニック)が販売している「PaPIRs(パピルス)」(以下、パピルス)は、さまざまな家電製品に埋め込まれている見えにくいデバイスのため、知らない方も多いかと思います。「PaPIRs(パピルス)」は、小さな焦電型赤外線センサのことで、右肩上がりで売上を伸ばしています。現在は500社以上で採用されており、そのうち7割が海外とのこと。パナソニックは20年以上にわたってグローバルで販売し、現在は8種類のセンサと14種類のレンズラインナップを展開。省エネ、省人化、タッチレスといったトレンドにあわせ、センサやレンズラインナップを拡充し、さまざまなニーズに対応した製品群が特徴です。生産しているパナソニックの津工場を見学しました。
レンズ一体型でオールインワン、その手軽さが魅力
パピルスの特徴は、業界唯一のレンズ一体型のPIRセンサです。PIRセンサとは、パッシブ赤外線センサとも呼ばれており、人体や動物などの物体から放射される遠赤外線量の変化を検出して動体を検知するセンサのことです。パピルスは、レンズのほかに焦電効果によって赤外線を含む光を検出する「焦電素子」、I/V変換、アンプ、コンパレータを組み合わせた半導体集積回路「ASIC」もすべて自社設計、開発しています。こういった部品がすべて小さなデバイスの中にギュッと詰まっています。
一般的な焦電センサは「焦電素子」と電流を電圧に変換する「I/V変換」のみ、ということが多く、ユーザーがアンプやコンパレータなどを用意し、組み合わせて使わなければなりません。パピルスであればオールインワンなので、ユーザーが開発する必要もなく、コストを削減できるため、企業から支持されているということです。
高感度でノイズにも強い、スマートなデザイン
外装は金属パッケージなので磁気シールド効果でWI-Fiルーターや形態電話から発生する電磁波も遮断できます。そのため、優れた耐輻射ノイズ性を実現しています。
また、焦電素子にはスリットを形成したことにより、4つの焦電素子の熱絶縁性を高めているそうです。赤外線変化をそれぞれ焦電素子に確実に送り込むことで、感度は従来品の約2倍に。
また、焦電素子は鉛を含有するセラミック素材を採用している場合が多いのですが、パピルスでは鉛を含まないリチウムタンタレートという素材を採用しています。製造中の工場内部で実物を見ることができました。
焦電素子に使われているというリチウムタンタレートを持ってみました。透明で軽そうだなと思ったら重っ! 鉄とほぼ同じ質量だそうです。
焦電素子を見せてもらいました。確かにスリットが入っていますね。
増産体制なので、ひとつの装置を流用できるように現在改造しているそうです。センサが次々作られていました
AIやIoTの拡大により、ますます需要が広がるセンサ
現在は照明制御やON/OFF、人の検知などで使われるため、さまざまな場所で活用されています。家電では照明をはじめ、エアコン、空気清浄機、テレビ、冷蔵庫など。最近では消毒殺菌用機器にも使われおり、使用用途は多様化しています。
さらに在室検知や見守り、家電制御、侵入検知、街路灯の制御など、IoTやAIに関連する機器やシステムにも多く搭載されています。センサは検知データを収集して活用するために使われるデバイスでもあります。AIやIoTが拡大し、データサイエンスなども注目されている今、小型で優秀なセンサは世界的に需要があるはずです。一般ユーザーには見えにくい部品ですが、今後伸びていくデバイスであることは間違いないので注目していきたいですね。