既存の建物も改修して省エネ仕様に--大阪府とパナソニック「ZEB化」で連携し脱炭素社会を目指す
政府目標として2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロが掲げられています。
大幅な省エネルギー化を実現するために、現在はさまざまな施策が行われているわけですが、その中でも省エネ化できる最先端の建築物「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」が注目されています(以前、パナソニックでZEBの取材を行いましたので、詳細は立ち上がる「ZEB」、省エネを極めた特別養護老人ホームを見てきた – パナソニックの取り組みから-マイナビニュースをご覧ください)
脱炭素社会に向けて、自治体も動き始めています。その中でいち早く取り組みを始めたのが大阪府。2022年9月26日に大阪府内のZEB化推進に係る連携協定をパナソニック株式会社 エレクトリックワークス社(以下「パナソニック」)と締結しました。
大阪府は2050年二酸化炭素排出量実質ゼロをめざして、2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比で40%削減する目標を設定しています。相互に密接な連携を図り、双方の資源やノウハウを活用することで、脱炭素社会の実現に貢献していく、とのこと。どのように進めるのでしょうか。
新規ではなくて既存の建物を「省エネ化」する取り組み
ZEBとは、省エネと創エネ基本的には建て替えや新規でビル建設を行う際に建物や設備を省エネ仕様にし、大幅な省エネが期待できる建物です。エネルギーを減らす「省エネ」と太陽光などでつくる「創エネ」の差し引きが0%に近ければ近いほど高いランクとされます。また、1万平米以上の延べ面積では「ZEBオリエンテッド」という定義も設定されています。
ZEBは新規や建て替えであれば、比較的推進しやすいですよね。ただ「既存の建物は……?」という話になってくるわけです。圧倒的に古い建物を補修しながら使用することが多いのですが、今は待ったなしの状況です。やはり既存の建物を省エネ化することは、非常に重要になってきます。
今回の提携は、ZEB化改修の可能性調査を行い、既存建築物に関するデータ(建築図書等)の提供を受け、ZEB化改修の検討からスタートします。
具体的には府所有建築物等の可能性調査の3件程度行い、「外皮性能の向上及び設備改修」「検討再生可能エネルギー設備等の導入検討」で、どれだけ省エネビルに生まれかわれるのか、ソフトを使って計算するそうです。
既存の建物は大幅な省エネ化は無理なのでは……と思っていましたが、大がかりな改修をしなくても、例えば照明や換気、空調を変えたり、省エネ性能の高い窓に変更するだけでZEB化できることもあるようです。もちろんビルの持ち主は費用面のこともあるので、交付金や補助金を計算しつつ、費用面のやりくりをしなければなりません。そういった計算や相談についても、これまで「ZEBプランナー」として33件のZEB化支援をしてきたパナソニックが支援できるわけです。
パナソニックの強みは、自社製の製品だけでなく設備ごと提案できること。地元に電気工事会社など、強いネットワークがあります。エネルギーマネジメントシステム(EMS)などを使った省エネ性能の維持・確認をするといったシステムで、省エネを持続させるためのさまざまな側面から支援できるとのことでした。
自治体と企業が提携してZEB化に取り組むのは全国初
自治体と民間企業がタッグを組んで、このような取り組みを行うのは全国初です。府が率先してこういった提携を行うことで、府民や事業者の脱炭素に対する意識や行動を変える狙いもあるようです。セミナーなどを開催し、ZEBの認知を広げる計画もあるとのこと。自治体にはZEB化の技術的なノウハウはないので、今まできちんと実績を残している地元の企業と提携することで脱炭素の加速が期待できるとともに、全国に先駆けて取り組むということもPRとして大きな意味がありそうです。
パナソニックはZEB化を事業として推進することで、近畿地区の既存建物ZEB化で2027年までに可能性調査を100件、受注金額を30億と見込んでいます。双方に大きなメリットがある提携と言えそうですね。
建て替えをしなくてもできるところから少しずつ変えて、その数が増えていけば、脱炭素社会の実現に近付いていくのかもしれません。個人ではあまり関係ないような内容に思えますが、こういった街全体での取り組みはいずれ個人にも関わってきます。
今後、この目標が達成されるのかどうか、見守りたいと思っています。
【パナソニック】
・会社名:パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社
・所在地:〒571-8686 大阪府門真市大字門真1048番地
・代表者:大瀧 清